20210419_SuMPO/心豊かな未来ビジネスシンポ「人新世の時代の心豊かなカーボンニュートラル社会とは」開催報告

一般社団法人サステナブル経営推進機構
SuMPO/心豊かな未来ビジネスシンポ
「人新世の時代の心豊かなカーボンニュートラル社会とは」開催報告

 この度は、「心豊かな未来ビジネスシンポ~ 人新世の時代の心豊かなカーボンニュートラル社会とは ~」に多数の方々にご参加いただき、誠にありがとうございました。
2020年10月、菅首相が国内外に「カーボンニュートラル2050」宣言を行ったことに伴い、様々な政策提案なども含め、新たな経済活動の枠組み国民的議論に拡がりつつあります。
一方、昨年12月に人間が建造、製造したものの総量と、地球上の生物の総重量が同じになる『アントロポセン(人新生-じんしんせい)』の時代に入ったとの論文が発表され、新たな経済活動やライフスタイルの在り方を模索しなければならないとする意見も生まれています。
そこで、本シンポでは、新書大賞2021を受賞されました『人新世の「資本論」』の著者である斎藤幸平氏をお招きし、「人新世の時代のカーボンニュートラル社会」について、SuMPO理事長の石田秀輝との対談形式で解きほぐしました。 

 まず、SuMPO理事長 石田より、「カーボンニュートラルの時代を生きる未来のカタチとは」というタイトルで基調講演を行いました。主な内容として、現状では生物の総量に対し人工物の総量がこれを超えてしまい、このままでは数十年間で文明が崩壊してしまう状況。あらゆるものを循環させ、循環できないものは作らないことが大切。テクノロジーに頼っても、大量生産・大量消費の正解は変わっておらず、逆に「エコだからその分沢山消費しても大丈夫よね」というような発想も生まれてしまっている。今後は、ほんの少しの不自由さ(喜ばしい制約)を理解し暮らし方自体を変えていく、即ち自己規制を個のデザインに結び付けていくことが大切でしょうとの発表を頂きました。
次に斎藤先生より「新しい生活創り、人間・自然を重視する脱成長型経済へ」というタイトルで招待講演を頂きました。アフターコロナでも恐らく経済のV次回復を目指すことは見えている=経済優先の考え方。一方で、SDGs,ESG,CSRなどはある種の「免罪符」的に用いられている部分も多く、単なる企業のPRに使われているケースも多い。今求められているのは「想像力の貧困化」(=自分たちの生活を変えなくても市場、技術、政策が変えてくれると思っている)からの脱出であり、より幅広い視野を持って単なる商品だけではなくその前後にプロセスにも思いをはせることが大切。バルセロナでは市民運動をきっかけに大きく街自体が変化した。今後は「新しい豊かさ」目指していくことが大切との講演を頂きました。

 対談について、キーワードとしては「資本主義」、「豊かさ」、「新しい価値基準」、「バックキャスティング」、「若者」といった単語が多く使われました。
即ち、これまでの資本主義というのは“資本を増やすこと”が目的で、価値基準はGDPでした。この世界は膨張、拡大のみを目指す世界。しかし、現状の延長ではサーキュラーエコノミーに結びつくことはないでしょう。現状を定量的に評価した上でバックキャスティングの思考が重要になります。さらに、このままほっておいても良くはならないと考えている若者も多くなってきており、彼らの意見も取り入れて新しい価値基準を作り出していく必要があります。昔は誰も興味を持っていなかった環境問題に対し、パリ協定やカーボンニュートラルの動きが広まったことから機運が高まり、時代が変わってきています。今こそ、脱成長化を考え、新しい豊かさを求めていくことが大切になるのではないでしょうか。